岸本佐和子は気に入った作品しか翻訳しないと聞く。そして、多分、彼女はショーン・タンの『セミ』をとても気に入ったのだ。翻訳しながら、ぽつりぽつりと言葉を区切ることが癖になり、だんだんセミっぽくなっていった・・・ような気がする。
よみながら わたしも だんだん セミ化 して いった。セミと いっしょに こころで ないた。ジー ジー ジー。
17年もの長い間、セミは誰にも認められず、ひたすら下働きをする。しかし、文句ひとつ言わない。
最後にセミは、羽化し、空から地上の人間を思い、大笑いする。長い苦労から解放された喜びからか?それとも人の愚かさを笑い飛ばしたのか?
私には後者のように思える。そして、もうひと頑張りだったのにと思う。最後まで完全に良い人(セミですね)でいてほしかった。
(写真左上のアブラゼミは下働き3~4年だそうです。
日本には17年も地中にいるセミはいないらしいです。)